macross個人的創作話 「オーバル・プレート」

ご注意(いつものです~)::::::::::::::::

「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」
をベースとした”二次創作”です。
原作やキャラのイメージを壊したくない方はご遠慮下さい。

えー、これは同じく、ぺぱみんの二次創作、
「虹 ―マクロスシティ―」
のその後のお話です。
作風はちょっと違いますが、「虹」を読んでいただくと
趣向がお分かりになるかと思います。
サイドのまたサイドというところでしょうか。

お恥ずかしいことに、飛行機とかオペレーションとか
軍関係の設定はものすごおくデタラメです///
(とんちんかんにはわからんちん)
その辺はスルーしてくださいませ。

気楽に more ↓ をどうぞ♪

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オーバル・プレート


あっという間に一日は過ぎていく。
生活のリズムを持たない宇宙人の攻撃が始まれば、なしくずし的な日々が生まれる。
戦争というものは、人々の生活をただ不条理に乱す。

・・・棒のようになった足で、部屋に戻ってきた未沙は大きくため息をついた。
しかし部屋に辿り着いたということは、またなんとか無事に戦いを切り抜けたということだ。

空腹を感じているものの、これから食事を採ることを考えると、なんだか気が遠くなった。
体調管理も仕事のうち。何を食べようか考えるが、体は休息を欲するほうが勝る。地球に帰ってきて、久しぶりの戦闘。やはり、実戦は疲れる。このところの睡眠不足のせいもあるかもしれない。

これで眠れないと思いつつも、未沙は引力に負けて、バタン、とベットに横になった。
目を閉じれば、乾いた目が沁みて痛い。
・・・つぶった目にぼんやりと輝の顔がよぎった。パネルに映し出された輝の顔が。それはカメラのシャッターが下りるような一瞬で、そのまま、消えた。
どんな表情だったか・・・思い出そうとしても、思い出せなかった。きっと余裕の無い戦闘中だったからだろう・・・それだけだ。

このまま寝込んでしまいそうになるのをえいっ、とばかりになんとか起き上がって、上着を脱ぎ、ハンガーにかけた。
いつもの習慣で電話の元へ寄った。戦闘中だったから伝言も無いと思うと、予想を裏切り、留守番電話のボタンが赤く点滅していた。

――たったいまだわ、誰からかしら?――

再生ボタンを押すと、『一件です。』と電話の声が告げたあと、「コホン」と咳払いが聞こえた。その咳払いに未沙は聞き覚えがあった。
「えっと…一条です。時間が空いたので、ちょっと電話してみました。また、あらためて電話します」
メッセージは以上です、と言い放ち、電話は勝手に切れた。

受話器を置くと、しばらくその場で固まっていた。

・・・低速しかけていた頭と体が、グラリと音を立てて動き出した。

未沙は、受話器をとった。
受話器をとって・・・そのままの姿勢で数秒止まった。
ひとり小さくうなずいて、息を飲み、そのあと電話機を4回プッシュした。
「プップップッ・・・」
呼び出し音が3回鳴った。
『はい、一条です』
「あの・・・」
『留守にしてます。メッセージをどうぞ』
輝は、部屋に居ないようだ。
「―――早瀬です。また、電話します」
ゆっくり受話器を下ろす。

なんだか、ホッとした。でも、ちょっと、なんというか・・・物足りなさが後を引く。

外からかけてきたのだろうか?
移動電話で呼び出してみようか・・・緊急事態でもないのに?
あつかましく思われるのはイヤだった。

再びゆっくりベッドへ腰掛け、ひざの上で両手を重ねた。どこを見るでもなく視線を落とし、胸に残った息を吐いた。

・・・輝の部屋で。ちょっぴり苦い別れ際。どうするのがよいのか考えあぐねているうちに3日が過ぎていった。輝の思いは伝わってきたし、自分の気持ちも判っていた。それなのに。

『電話に出られなくてごめんなさい』
今だったら、まず、こう始めればいい。

                     *

弛緩していた腕を伸ばしながら、目覚まし時計をとめた。
未沙は、ゆっくり起き上がると、力ない足取りでベッドから離れた。
柔らかい糸で出来たロング・カーデガンを羽織る。
羽織いながら、電話を見下げた。なにも変わったことは無かった。
夕べは、電話も眠りに着いたように、あれから何も言わなかった。隣には遺跡の採集物が場所を同じくして飾られていた。

頭の重さを感じながら、キッチンへ行き、水道からコップに水を注いだ。
一口飲むと、だんだんと目覚めていく。
このところの連続勤務でぎりぎりまでゆっくりしていたいのはやまやまだったが、やれるときに身の回りのこともやっておきたい未沙だった。
眠たい目を擦りながら、洗濯物を備え付けのランドリーに放り込む。電子音が鳴り、回転し始めた。すぐに備え付けられた掃除用のチューブを取り出し、柄を付けて部屋を行き来した。
これらのことは軍のハウスキーパーにも頼めるのだが、できるだけ自分でというのが、彼女のこだわり、というかちょっとした意地だった。
やらなきゃ、女が廃る。家庭的だった母親の影響もあるのかもしれない。そんな気がしていた。
マクロスきっての模範的女性士官は、本人は職務をまっとうする一心だが、人々はそう判断する。そんな性格は生活の上でも現れているようだった。

つづいて未沙は、朝食の用意をするため、パンをトースターに入れた。朝食の定番は、トーストとオレンジジュース。たまに卵料理を添えるくらい。本当は和食が好きだけど、マクロスの生活では手早く簡単なこれらにしている。

低く唸るランドリーの音。芳ばしいパンの匂い。
パジャマを着替える頃には、「いつもの」早瀬未沙に近づいている。

               *

ブリッジへ入り、自分の定位置に就くと、各部隊の編成を確認するのが未沙の毎日の日課だ。キーを叩いて、専用のディスプレイ・パネルに目を通す。緊急事態時にいきなりこの場に就くこともあるから、この仕事が最初に出来る時は、ごく落ち着いた状態。慣れた作業を手際よくこなす。

「・・・ウソォー!また私のこと、からかってるんでしょ!」
「うそなんかついてないわよ。バカね、あんたが知らないだけよ。それともカマトトぶっているのかな~?」
姦しい部下、キムとシャミーの声が響くのもそんな日を象徴している。

「未沙、おはよう」
「あ、おはよう」
片手にコーヒーを持ち、出勤したクローディアと視線を交わす。隣の持ち場に着く早々、彼女もパネルに手を延ばし、操作し始めた。

着信した人員データに目線を戻す。
ええと。今日のパトロール部隊・・・は。
小隊による、基本のローテーションが組まれている。
・・・予感はあったが、その中に、『H.ICHIJYO』の名があった。それを見ると、未沙の心は僅かに動いた。少し眺め、ファイルで隠すようにしまいこんだ。
未沙は何事も無かったようにレーダーの統計ファイルの確認に移った。

               *

「4番機以下はエリア後方も確認してください」
未沙の指示が終わると同時に機体は俊敏に飛び去っていく。たちまちに見えなくなった。

今日の地球上空は晴れ。
高い空だが、快晴ではなく、薄くひだのような雲がたなびいている。そんな空も好きだ。空と重なってやさしい色合いを醸し出している。
眼下の水面には、光の輪がきらきらと輝いている。

これが一瞬に暗黒の地獄絵のような空模様に変わることもあって・・・そんな想像をした自分がいやになる。

次はスカル小隊の番だった。
輝に対し、頭のどこかで意識が働いてしまうが、交戦中に感情に流されるのはもってのほかで――以前は別の意味で心乱されたものだったが――気構えさえもやりすごしていたつもりだった。輝もそれが当然と思っているだろう。
でも、心の底ではすっかり平静になれないから、最近任務に対してちょっぴり罪悪感を持っている。

最後に送り出すバルキリーの機首がせり上がった。
前面のメインパネルに輝の顔が映し出された。
「3番機…」
未沙は相変わらずの顔をして指示を送るつもりだった、が、ふと夕べの咳払いを思い出し、思わず声がこもった。
レーダーを確認するふりをして、パネルを見ずに指示する。
「…3番機はエリア115から320までを確認。異常がなければ557まで拡大してください。」
「了解!」
なんとはなしに送り出せたと、未沙はホッとした。
「あのー、エリア・ワン?」
思いがけず、問いかけのような輝の声が返ってきた。
「は、はい。」
未沙は思わず顔を向けた。輝と目が合った。
「・・・なにかありますか?」
「ああ。少しだけ、伝達事項を」
伝達事項?
未沙は不思議に思ったが、「許可します、どうぞ。」と促した。
「・・・えー、この機は、異常なくパトロールを終えれば、ミーティング。その後、倉庫でいつもの点検、これで本日の任務は終了です!」
「え?」
「応答、待っています…以上!!」
すると、輝の機体はシグナルの間隔を無視して、発進し、機体を小さく光らせた。

・・・未沙は、自覚した。おへそのあたりから、ふつふつとおかしみが込み上げるのを。
体温が上がる。息がもれそうになるのをこらえ、口を結んで表情を保った。

それにしても、輝がこんなことをするなんて、意外だった。
いや、いままでも、たまに大胆なことをして驚かせる人間ではあったが・・・。
そういえば、入隊のきっかけになった彼の大先輩は、パネル越しの約束がお得意だった。
そっと・・・横のクローディアを見た。クローディアはグローバル艦長と会話中だった。

「大尉?!」
逆の方向から声がして、未沙はぎくっとした。声の主はレーダー解析担当のヴァネッサだ。
「パイロットって、いつからスケジュール報告まですることになったんですか?」
ヴァネッサはメガネの奥で目をきょとんとさせ、首をかしげた。
未沙は彼女と同じような表情を作って、首をかしげた。

              *
  
未沙は書類の辺を整えるため、デスクに書類を打ちつけた。小気味よい音がして、角が揃った。電子バインダーの電源を落とすと、時計は勤務終了時間から10分を経過していた。

“まさか、勘違いじゃないわよね・・・”
あのあと何度も・・・不謹慎ながら・・・相手の言葉や表情を反芻し、確信しては、いたずらに疑ってみたりした。

普段どおりでいけば、輝はもう勤務を終えているはずだ。
パイロットはパトロールのような決められた仕事もあるが、混濁する戦争中は体力を温存、緊急事態に備えるため勤務は比較的短い。

IDカードを差し込み、自動ドアがスムーズに開いた。
廊下に出ると自然と急ぎ足になる。
輝の背中の後ろにあった、あの青い空のせいかもしれない・・・この数日に比べ、こんなにも気持ちを躍動させている自分が、単純だわと思ったりもする。

――待ち合わせまで、ちょっとだけ時間をもらおう。めいっぱいのおしゃれをするつもりはないけど、少しは身ぎれいにしたいし――
自室のドアを閉じ、そそくさと電話に手をかけた。
受話器をとろうとすると、また留守番が点滅していた。再生用のボタンを押した。
『一条です。えっと、さっきの意味伝わった?・・・よかったら、夕食をいっしょに食べないかなと思って。でも、実は、機体整備にも立ち会うことになって、まだもう少しかかりそうなんだ。また電話します。それじゃあ・・・』

慌てる必要はなくなったが、未沙の胸は静まらない。

堅苦しい制服を脱ぎ、Vネックの薄手のニットと白いセミタイトなスカートを身につけた。
洗面台へ行き、髪をといて、化粧を軽く整えた。昔からつけているお気に入りのネックレスをしながら、ふと、思いついた。
「・・・そうだわ・・・」
未沙は電話をした。呼び出しのあと、昨日と同じメッセージが流れた。
「・・・おつかれさまです、早瀬です。今から30分位、外出します。戻ったら、連絡します」
伝言を終えると、未沙はいつも持ち歩くバッグを引き寄せた。
未沙は部屋を出て行った。

              *

せわしなく動いていた未沙の背に、ピンポーン、とドアのベルが鳴った。
スリッパの軽い音をさせ、未沙がドアを開くと、輝が目の前にいた。パイロット・スーツの姿のままだった。
「どうも・・・」
ベルが鳴った瞬間、ほんの予感はしたが、このフロアは女子部屋ばかりのフロアなのだ。未沙は内心そわそわしながら、何も言わずドアを大きく開けた。
輝を招きいれると、思わず未沙の笑顔もこぼれた。
「・・・おつかれさま」
輝は外の匂いをまとったまま、未沙の部屋の中へと進んだ。
直接面と向かうと、だんだんとこのあいだと繋がっていき、気恥ずかしくなった。
「突然来てしまって、すまない。遅くなっちゃったし、電話は何度もかけたし・・・帰りがけに寄ってしまった方が早いと思って」
「じゃあ・・・留守電は聞いてないのね」
「うん、まだだけど?」
「別に、いいの」

「・・・あのさ、」「あのね、」
と二人の声が同時に発せられた。
針穴ほどの沈黙のあと、
「どうぞ」と互いに譲り合った。

「じゃ、えーと。昼間の・・・通じた?」
「え、ええ。突然だったから、少し驚いたけど・・・ありがと」
「昨日、電話くれたのに出られなくてごめん。あのあと柿崎たちに食事に誘われてさ・・・結局、話せなかったから、思いつきで言っちゃったんだ」
輝のいくらか埃っぽい顔に白い歯がこぼれた。照れたようにすぐ視線をはずしたように見えた。こんな輝を目の前にしていると、3日前の出来ごとが嘘のように思えた。
「・・・じゃ、今、着替えてくるから」
「私・・・そのままでも、構わないと思うけど」
「うん、でも・・・」
胸の辺りや腕、輝はわが身をぐるりと見渡した。
「機体にもぐりこんだりして、あんまりキレイじゃないからさ。すぐに支度するよ。じゃあ、30分後にロビーで・・・」
輝が部屋を出ようと、ドア取っ手を引いた。
「あ、ちょっと、待って。一条くん」
「えっ?」
行きかけた輝が大きな目で、振り返った。
「・・・作ったの。二人分」
「・・・えっ、もしかして・・・」「・・・食事、作ってくれたの?」
「ええ。」
さきほど未沙が出かけたのは食事の材料を買い込んできたのだ。
「本当?!」
輝があまりにも嬉しそうな顔をしたので、未沙は躊躇した。
「でも、たいしたもの、用意してないの」
「うん?―――」
輝が鼻を高く向けた。
「そういえば、なにかいい匂いがするなと思ったんだ」
未沙は余計に料理の出来が気になって、手と顔を横に振った。
「本当に適当なのよ。だから、本当に、期待はしないで欲しいんだけど」
「・・・うれしいよ・・・じゃあ、いますぐ着替えてくる」
そう言って、輝は部屋を出ていった。輝はフロアを駆け抜けて見えなくなった。
未沙はそっとドアを閉め、狭いキッチンへ戻った。
未沙にとって、初めて男性に作る食事。ちょっと緊張しながらも、わくわくした気持ちで最後の仕上げに取り掛かった。

「いただきます」

未沙と輝は小さな持ち出し用の丸いテーブルに、向かい合わせで座った。
「お口にあうかどうかわかりませんが」
輝はテーブルに並べられたすみずみに目を配った。
「すごいな・・・」
スプーンを手に取り、スープ皿のダイス状の野菜を掬った。トマト味のミネストローネ。
「うん、美味しい・・・!」
「本当?」
「ああ」
「・・・これは?」
輝は楕円形の皿の上を指した。
「ミラノ風のカツレツ。名前は気取ってるんだけど、手抜きのできる料理の一つよ」
「へえー、はじめて食べるかもしれない」
未沙は、手早く作れて、見栄えのするものを選んだつもりだった。皿の脇で小さなサラダがみずみずしく彩っている。

二人で囲む食卓はこれで何度目になるのだろう。
自分で作った料理は、美味しいのかどうか未沙はわからなかったが、満足げな表情でに食べ続ける輝を見ていると、自分の心も満たされていくような気がした。

こうして二人、再び面と向かっているけれど、色々な問題を突き詰めることはしたくなかった。避けて通れないこともあるかもしれないが・・・今はこのままでいいんじゃないかと思った。なぜなら、この時間がこれからも続くのではと、疑うことができなかったから――。

「手料理って、あんまり食べたことが無いんだ。」
輝はそう言って、水滴のついたコップの水を少し飲んだ。
母親の愛情のこもった料理を食することのなかった輝だ。その端々に触れるたび、未沙はせつない。払拭するように、未沙はフッと笑顔を作った。
「こんな平凡なものでよければ、いつでもどうぞ。」
「・・・平凡?じゃあ、平凡っていいもんだな、美味くて」
輝はまたスプーンを一口運んだ。
「・・・今度は、ちゃんと時間あるときに作るわ」
そう言って未沙はフォークの先をそっとほおばった。

融点のような、まろやかな時間。
洗濯や掃除はしなくても何とか生きていける。極端に言えば。でも、食事だけは必ず体が欲するし、摂らなければ生き物は生きてゆけない。
食物に逼迫した漂流生活を乗り越えたからこそ、今があるんだなあ、と思ったりもする。

そうやって自然に。当たり前のような関係でいられたら、と未沙は思う。

ひと通り平らげた輝が、ひさしぶりに口を開く。
「・・・この間はごめん。突然、さ」
「え?」
「ほら、バルキリーに忘れ物しちゃって・・・」
「ううん。・・・あのバック、いつかミンメイさんに返せるといいわね。」
「ああ・・・そうだな。」
「ええ。――あ、そうだわ、スープのおかわりがあるんだけど、よかったらいかが?」
「ああ。もちろん、いただくよ」

惑星に隠された彼女の話題さえ、今は加減のよいスパイスかもしれない。
一定しない孤を描く皿の上。芳ばしい香りが二人の鼻腔をくすぐっていた。



<おわり>
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by peppermint_y | 2002-08-10 17:00 | comic