macross個人的創作話 「アルティラの夕凪」‐extra‐

お読みになる前に::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
このお話は「超時空要塞マクロス・愛おぼえていますか」
をベースとした”二次創作”です。
先に掲載した「アルティラの夕凪 ‐adjust‐」の別ver.、
全文掲載(ははは・・・;おおげさ;)です。前半が補充されています。

初めてお読みになる方へ:
以下の方はお読みになるのをご遠慮下さいね。

原作、キャラのイメージを壊したくない方・18歳未満の方・
大人向け(男女関係)表現に嫌悪される方


以上、全てOKな方はお進み下さい。



040.gif【2008年9月13日 追記】

ゆば様からSSの素晴らしいカットを頂戴し、掲載させていただきました!

    ★☆THANKS a lot . ゆばさん★☆


・こちらの二次SSは当初2008年6月ごろに掲載しました(※作品整理のため「投稿日時」を指定しています)。内容から「期間限定/コメント停止」にしておりましたが、しばらく経過して特に影響が無さそうと判断し、通常のログにしました>あえてここに記すまででもないですが一応(^^;)
内容に変わりナイので、くれぐれも閲覧場所、そして後方(お子様のいる方など…)によろしくご注意ください♪

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※無断転記はご容赦願います(念のため・・・)※





「アルティラの夕凪」




アンダースーツの下の体温が伝わってくるほど長く固く抱きあい、お互いにその身体を引き離そうとはしなかった。
未沙の長い髪を、壊れて大きく開いた窓枠から吹きぬける海風が揺らした。
二人は動かない。輝は支えるように未沙を抱き、未沙は輝に顔を傾けたままだった。
ここに生きるのは二人だけ。
輝は未沙の体温を感じることで、未沙は輝の心音を聞くことで、生を悟れるような気がした。
未沙の頬から伝う涙は頬を滑り落ちて輝のスーツの右胸に吸収され、そこだけ色濃くした。

人類の生活様式と変わらないこの場所。

強い風が吹き、螺旋を描く様に天井へ通り抜けていった。
眠りから起こされたようにゆっくりと、一つの影が動いた。
お互い見つめ合うと、相手の瞳に映るのはありのままの自分しかいなかった。
しばらく視線を絡ませた後、表情を崩して口元に笑みを作ったのは輝の方だった。
「きっと帰れるよ、僕たち、マクロスに。」
「一条君・・・。」
またひとつ未沙の目から雫がこぼれた。

未沙の髪を指先で梳き、指先は肩へと流れ、手を手繰り寄せてしっかりと繋ぐ。

いつしか・・・いや、とっくにどこかで息づいていたのかもしれない。それはだんだんと膨らみ、体の奥で、にぶく、甘く蠢くものが芽生えた。

“このまま一つになりたい・・・”

温かくてかなしい未沙を全うしたいと思った。
プログラミングされた・・・どこからとも発信された欲望を輝ははっきりと自覚した。それは早急に体を駆け巡り、もどかしく握った未沙の手にぎゅっと力を込めた。
強い力に未沙が顔をあげ、輝を覗き込んだ。その目は涙を残していたが、すでに凪いでいる。
そしてふたたび安心したように胸元にあずけた未沙の重みを受け取ると、輝は意を決した。

率直な気持ちを告げた。
「・・・君をずっと抱いていたい」
言葉を発したあと深く息を吐き、さらに未沙を引き寄せた。

未沙は動かず、目だけをゆっくり見開いた。
未沙にしても、広く厚い胸で鼓動を耳にし、この安らぎにずっと浸っていたかった。
しかしまだ輝の決意には遠いものだった。
「・・・・。」
どう答えてよいか分らず、うつむいていると相手の指が未沙の顎をそっと持ち上げた。
輝は変わることなく優しいまなざしを向けているが、その奥にどこか真剣な光を放っていた。
未沙は視線を宙にむけ、光から逃げたが、掴んだ指の間に輝の指が進入し握力が強くなった。ハッとして、目が合った。
輝の影が濃くなり、未沙を覆った。くちづければ輝は夢中になってしまう。さきほどの包みこむような柔らかいものとは違い、未沙の下唇をしっかり捕らえて離さない。
とっさに体を引こうと思ったが腰に回った彼の手によって動けない。さらに歯の隙間から舌が入ってきてそれが小魚みたいに暴れた。瑞々しい唾液とともに未沙はその小さな生き物に翻弄された。

しばらくするとしびれ薬のように二人の全身を支配した。

『このまま・・・』
輝はもう一度、確認しようと思ったがやめた。瞬間、未沙の唇が自分に同調しているのがわかったからだ。
風が吹いて、足元の水たまりがさざなみをたてる。
未沙の長い髪が輝にも巻きつく。

輝は体を離して、未沙を抱き上げ、くるぶしほどの溜まった水の中を歩いた。
足の力を奪われつついた未沙は軽がると運ばれた。キスに陶酔した自分を頭のどこかで軽蔑しつつ、腕の中が心地よかった。
奥間となっていることから寝室だったのかもしれない、水から逃れた平らな場所、もしかしたら遠い過去の住民の寝台に未沙を降ろすと輝も隣に腰を下ろした。
口づけからまだ覚めないでぼんやりしている未沙を輝は可愛らしく思った。キッチンでの仕草と同じくらいの・・・思わず輝は手の甲で未沙の頬をそっと撫でた。

未沙の頬は赤みが差しているが、呼吸は落ち着きを取り戻しつつあった。
輝は未沙の様子を見つつ、衝動は止みそうになかった。
どこかへと手を伸ばそうとして、肩はこわばり、手が汗ばんでいるのに気づく。
自分もこの状況にのぼせているのが可笑しくなった。

・・・彼女を支えながら、右手で喉元のファスナーをつまんだ。
・・・低い音をたてながら、自分はなにかの引き金を引いているのかもしれない。

未沙は伝わってくる鈍い金属音に身を縮めながら、その手の行方を目で追った。この現実を見つめていないと、全身の力が抜けていきそうだった。
輝の指と共にファスナーが臍の辺りで止まり、肩からスーツを外す。
邪魔が無くなって、うなじをかき分け首筋にキス。
首筋に手を当てがい、ゆっくりと未沙の上半身を置く。未沙は横になるとアンダーシャツの背中がひんやりと冷たかった。

未沙は震えた。背中の冷たさにではなくこの先の・・・未知の営みであってもプロトカルチャーの遺伝子が本能で察知しているのだった。
潮の香りが二人の鼻先を伝う。緊迫する二人にまとわりつく。

輝は腰に止まっていた未沙のスーツを爪先まで下ろし、取り去った。
輝も自身のスーツを取り払い、アンダーシャツを脱いだ。
それらの音は現実的だった。
未沙はあらわになった両腿を恥ずかしげに揃えた。

バラ色に頬を染めながら、緊張している面持ちの未沙。
輝は未沙をあいだに寝ている台に両手をついた。ふと硬く冷たいことに気づく。
自分の脱いだスーツを手繰り寄せ、コンクリートの上に敷いた。
「ごめん。冷たいね。この上に体を乗せよう・・・。」
決して気が利くタイプでも器用でもない“男の子”らしい輝が思いついた気遣いだった。
未沙はこの一ヶ月、こんな輝の優しさと何度か出逢うことがあった。
しかし、いつも心を制御するものが立ちはだかっていた。
でも、今は素直に受け入れられる。
テーブルで手を取り合い、目と目が合ったときの不思議な因果。

未沙を跨いだ輝の身体が大きく感じられた。
頬をそっとなでる。見つめ合う視線が微笑をもたらした。
再び注がれた唇の感触に、未沙は目を閉じて酔うことにした。
たまに唇が離れた時、水面に現れた人魚のようにため息を漏らす。
熱い手が胸を被うと未沙はびくっと肩を動かした。
「・・・一条君・・・」

未沙のシャツをたくしあげると、あらためて輝は未沙が自分と異なる肉体の持ち主なのだと思った。それらは視線を誘引した。
自身の思いをぶつけるように夢中で唇を這わせた。

未沙は自分の内部が万華鏡のように動き変化していくのが分かった。
妖しい変化が身体中に行き渡り、自分を開放したくて思わず吐息が出る。
「うっ・・・。」
輝は自分の掌があぶりだす赤みを残す未沙を見て、さらに燃え立つのを感じていた。
輝の肉体もなりゆきで目覚め始めていた。

彼女の吐息が繰り返されるたび、輝には先を示すシグナルと課していた。
輝は繊細な場所へ誘われて奥へと手を伸ばそうとした。
「・・・ああ!」
未沙はさらなる進入に思わず声を発した。
「・・・ちょっと待って・・・!」
輝はまだ進もうとしていた。
「お願い・・・」
輝は必死な声で我に返った。観念したように手を引いた。
「・・・ごめん・・・」
欲望が砕けたわけではないが、その体温が輝の心を充足させていた。
「もしイヤなら・・・やめてもいいんだ。」
その気持を証明するように、大きな目を伏せ、再びゆっくりと開いた。
明らかに―未沙自身の体は熱く、開きかけ、輝を求めているけれど。
うらはらにどう振舞えばよいのか混乱し思わず否定してしまう。
「・・・大丈夫。ごめんなさい。」
「無理に、ってわけじゃないんだ」
「・・・ありがとう。でも、もう迷わないで。」
「・・・本当?」
「・・・ええ。少し緊張しているだけ。」
「なにか・・・なにか、言いたいけど、思い浮かばない。」
「私も同じ・・・」
輝はうつむき、急に照れたような顔になった。
彼は母性本能をくすぐるような、なんとなく放っておけない表情を持っていた。
甘く、それでいてイノセント。未沙はいままでもその表情に胸灯るものを感じていた。
「・・・未沙・・・・。」
削れた声で初めて、名を呼んだ。
未沙ははっとした。
なぜか、答えるよりも先に涙がこぼれた。
未沙も小さく唇を開いた。
「・・・輝・・・。」
彼女のつぶやく彼の名は宙を漂い、彼の奥底に吸収された。
輝はすべてすくうように抱きしめた。

想いは溢れ始めている。

輝は身を起こし、汗を吸いはじめているTシャツを脱ぎ去った。
風の部屋で、生まれたままの姿になり、二人は抱き合った。
あられもない姿を互いで隠すかのように、それはまだすこしぎこちない。
反して肌はなめらかに吸いつき、同化するようだ。

輝は未沙の弾力を直にし、もっと深みへ進もうと探求心が湧き出す。
そしてそのまま罠に落ちたい・・・。
輝は未沙の膝をゆっくり解いてその間に自分の身を置いた。
唇は滑るように降りて臍のくぼみで戯れる。いたずらのあと、輝は隠し場所にたどりつき、顔を近づけそっと唇を寄せた。
「あっ・・・。」
未沙は新たな体感に弱った声を上げる。
目をつぶってかぶりを振り、押し寄せるものに耐えるが、裏腹に、自身の身体も揺らぎ始めていた。歓びがいつの間にか未沙を超越していた。

輝は、彼女も自分と同じなんだ、と思った。
輝は確信すると、未沙の真正面に戻り、額に汗をまとった彼女に、最後の審判を委ねるのだった。
「?・・・」
輝の瞳の問いかけに、未沙には拒む理由がもうどこにも存在していなかった。体の芯もすっかりほどけてしまった。
声に出さず頷いた。
輝は孕んだものでかき分けて、未沙の暗い入口にあわせた。彼女の負担をわずかにでも軽減しようと、顔を見つめ、ゆっくり慎重に沈めていく。そう思いつつも壁面はなめらかでまやかしのようだ。
歓待の雫が溢れているものの、途中、進入を抵抗するものを感じ、ひるみそうになる。
汗で重くなった前髪がうっとおしく邪魔する。
それよりもの敵は、思うまま乱れてしまいそうな自分自身だった。

輝が進むにつれ未沙は眉を寄せ、肩をふるわせた。
彼はこの慰めが一瞬解からなくなる。護りたい相手であったはずなのにあきらかに自分の与えるものに耐えている。
「・・・大丈夫?」
「・・・え・・え・・・・・・。」
「・・・本当に?」
「・・・・・・。」
未沙がうっすら目を開けそっとうなずき、おぼろげな笑顔を作った。
息のつまりでも本心からでないと分かったが、その気遣いが輝を奮い立たせた。
頬にやさしくキスした。
輝はついに未沙に全てをあずけた。

未沙は焼けつくような痛みを覚えながら、瞼の中では夜空の星を見ていた。
じんわりと頭の上から爪先まで、しびれが回っているが心は満ち足りていた。それを伝えようと、たどたどしく彼の背中に腕を回した。
彼が多少とも感じている罪をやわらげようと。マリアのように包み込もうと。

未沙の瞳からひとしずく涙が流れた。それを追うように輝の額から汗が落ちた。
二つの水滴は未沙の頬を伝い、柔らかな髪に吸収されていった。

・・・今こそ二人はひとつになった。
テーブルの上で手を取り合い、心通わせた瞬間、真摯にこうなる事を望んでいたのだ。
二人さえほんとうの理由は知らない。全てはゆかりのすべ・・・。

それから・・・身体は海中の渦のようにうねり、動いた。
その終わりを声をあげ、天に乞うて抵抗したが、なすすべもなく、欲望は水の泡のように浄化されてしまった。


                           ***


二人、空を仰いだまま身体を横たえていた。
味わったことの無い疲労と充足が体中を拘束して、長いような短いようなひと時はひとまず置き去りになっている。

輝は浅い眠りから目を覚ました。
未沙はまだ微かな寝息を立てている。
輝は身体を起こし、眠る未沙の顔をしばらく見ていた。
こんな風にじっくり寝顔をみるのはこの生活で初めてだった。今までも少しは興味をそそらないでもなかったが、”上官”の眠る姿を見たなんて、気づかれでもしたらと自然に心で制約していた。
その、彼女の眠る表情はあっけないほど無防備だった。
未沙のことは少し前までしっかりした年上の女性だと思っていたが、その表情は惹かれた未沙と同じだけ愛おしかった。
鼻先にあるなめらかな肩・・・指を触れてみるとひんやり冷たい。このままだとまた風邪でも引きかねない。
この生活で寝具として使っているパラシュートを取りに行こうと思った。
安らかな寝息を途絶えさせてしまうのをためらって、そうっと自分の着ていたものを手繰り寄せた。
Tシャツをかぶり、アンダースーツの腕を腰で結びながら“すぐ戻るから・・・”とつぶやいた。

外に出ると、日が傾き、空の色が変わり始めていた。
汗をかいた首筋を潮風がぬぐっていく。
思いの外、足取りは軽い。自然と駆け出したくなった。
地平線の向こうに現れるものを待ちわびていたが、今、それはどうでもいいことに思えてくる。

・・・柔らかい感触がまだこの胸に残っている。
幻じゃないんだ、と肯定する自分はなんか浮ついているな、と思った。口元をほころばせ、走りながら体をひと回りさせた。

バルキリーに積んだパラシュートをとり、戻ろうと機体から降りていると、廃墟から歩いてくる人影があった。未沙だった。
輝は急いで降り、駆け寄った。未沙も輝の姿を認めると走りだした。
辿り着いた未沙は輝を見て、ほほえみをつくるとうつむきながら言った。
「夢であなたが去っていく後姿を見たわ・・・」
「夢?」
「いつも見てたライバーの夢に似てた・・・」
いつかの夜、輝は未沙から『ライバー』という名を知らされていた。
輝は手のパラシュートを放り出し、抱きしめた。

                           *    

「地球へ着いたばかりのときは夕日が恨めしくて」
渚で水平線を見つめた未沙が言った。
「また夜がくるのかと不安になったけど。」
引き潮になり、海に散った誰かの・・・朽ち果て錆びついたバルキリーが姿をあらわにしている。
夕陽を遮るものはなく、二人の顔に容赦なく錆びたオレンジ色が吹きつけた。
ひるむことなく二人は波の際にたたずんだ。
「明かりが消えた後もあなたと言葉を交わすようになって・・・。安心して眠りにつける日がやってきたの」
さっきまで自分を打ちのめしていた暗い影はどこにも見当たらない。
未沙は風に流れる髪を手でまとめた。
「僕も同じさ。なんでこんなことになったんだってヤケになりそうなときもあったけど」
「・・・。」
「最初は正直、この地球に一人飛ばされていたほうがマシだと思った。一人には慣れてたしね。」
波が二人の足元をすくっていく。
「地球の全滅を知って、テントを作ったり、飲み水を確保したり、魚を採って分けて食べたり、きみが寝込んだとき、ああ、ふたりでよかったんだって」
「それを見て、本当に生きてぬこうとしているのはあなただって思ってたのよ。」
「そういう状況に慣れていただけさ。」
二人の足元に戦い散った兵士のヘルメットが波にもてあそばれている。
輝は夕日をまっすぐに見た。
「・・・マクロスが帰ってくることを信じられる?」
「ええ」
未沙が微笑んだ。
「きっと現れるわ。」
「うん。」
太陽が海の中へ沈みかけ、二人の影はさらに長く砂浜を這う。
「・・・ねえ・・・。」
未沙が胸の前で手を合わせ振り向いた。
「今夜、あの場所に泊まらない?」
「あの・・・異星人の家?」
「そう、テント、ではなくて」
「・・・いいけど、今夜、雨は大丈夫かなあ」
「そうね。降れば雨漏りは確実だものね・・・。でも、雲はないわ、きっと平気」
「うん。そうと決まったら暗くなる前に準備をしよう。」
輝がパラシュートを担いだ。そのまま肩に上げ弾けるように波打ち際から走っていった。
そんな輝の後姿を見ながら未沙はあとをゆっくり歩き出した。

その夜、二人はもう一度同じ場所で身体を擦り合わせた。
昼間の想いを一つ一つ確認するかのように、さらに深く強く求め合った。
星がまたたく下で我を忘れ、岩に打ちつける波のように、乾いた砂浜のように。
紡いだ証に二人の奏でるメロディが宇宙に響いた。

ごわついたパラシュートの繭の中で肩を寄せ合う。
ほぼ満月に近い夜、部屋の中へも光が差し込んでいる。

「ここが・・・異星人が文化を取り戻そうとした場所か。」
「愛を取り戻そうとした場所・・・。」
「戦ってばかりの男と女。それではいけないと気がついた人々がこの文明を作った」
「そう。コンピューターは私たちにそう告げていたわ。」
「でも男と女に分かれて戦いを始める理由ってなんだったんだろう。」
「そうね・・・。」
未沙がパラシュートを引き寄せて肩を沈めた。
「もしかしたら・・・相手を思う孤独に耐えられなくなった、とか。」
「・・・孤独?」
「愛情や恋愛はいつも思い通りに満たされるものではないわ。そんな空しさや寂しさを抱いて生きるより、わずらわしい感情を一切排除してひとりでも生きていけることを選び・・・ってこれは今思いついたこと。」
「・・・ふうん。」
輝は遠く夜空に視線を移した。
「やだ、ちょっとセンチメンタルなこと言っちゃったわね。」
「・・・それにすら気がつかない人間とどっちが不幸だろう」
「え?」
「僕は自覚さえなかったのかもな。」
「・・・。」
「いつもひとりでいることがあたり前で・・・」「・・・この地球で初めて孤独を知ったのかもしれない。」
未沙の胸が静かにきしんだ。

「・・・ねえ」
「なあに?」
「・・・異星人って、オレ達に似てない」
「私達?・・・ええ、わかるわ。」
「マクロスにいたころはケンカばっかり。お互い、やることなすこと気に入らなくて」
「そうね・・・ふふふ。初対面から、ね。」
未沙はゆっくり顔を向け、輝の横顔を見た。
「・・・それが今・・・こんなそばにいて・・・」
言った後、輝は急に照れくさくなり、上を向いていてよかったと思った。
「・・・ええ・・・。」
未沙は部屋を見渡した。
「・・・ここはそういう力が宿る場所なのかしら。」

二人、真上の見ると月が高く上がっている。
未沙は、昨日の月よりも丸みを帯びている、と思った。
星は控えめな光ではあるが、空に圧倒的な数をひきしめている。
「月は昔からなんにも、変わってないんだよなあ。」
「昔の人もおんなじ月を見てたのよね。」
輝は両手を空へ伸ばし、光に手をかざした。そして月を指で丸く囲った。
「なあに?それ」
未沙はくすくす笑い始めた。
「はははっ・・・。」
輝自身も思わずのしぐさが子供っぽいと気づき、つられて笑った。

未沙は少し前まで男性と過ごすことが愉しく安心感をもたらすものだと知らなければ、理解をしようとも思わなかった。それが今、フォッカーの言っていたことが、なんとなく、判る。
未沙は、輝がかけがえのない人物になるのでは、という予感をもった。

照れ笑いしながら、輝は頭の下にした腕のわきから未沙の横顔を見た。
光に照らされ、肌の白さが際立っていた。
月と同じくらいつややかだ、と思った。
そしてこんな風に過ごすのは初めてなのにパラシュートの中に伝う未沙のぬくもりが懐かしかった。

温かい空気はその存在を恋しくさせて、輝の中でだんだんと甘いとぐろが巻かれていた。
細やかに笑い続ける未沙のやわらかい声がエッセンスとなって期待は膨らんでいった。
輝は腕を立てて体を起こし、未沙の笑顔を覗き込んだ。
彼女の瞳の答え次第ではまた口づけから始めたいと思った。

・・・浅い眠りは朝霧の轟音によって覚まされることを二人はまだ知らない。
それが輝と未沙の戻るべき場所、マクロスだということも。
心地よい疲れに浸る二人はそれよりもしあわせな夢を見ていた、のかもしれない。



<おわり>






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illustration by yuba
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by peppermint_y | 2002-08-05 17:00 | comic | Comments(0)

昔のマンガやアニメに懐古中


by peppermint_y