とうとう「牧場の少女カトリ」の二次も作ってしまいました。
ワタシが作るお話なので、カトリ×マルティの休日・・・という軽いノリのお話です。 ふたりの声を思い浮かべながら作ってみましたが??? ありきたりな設定だし、短いけど相変わらずまとまりが無い。それでも、という方はどうぞ! 念のため! ↓↓↓ ☆★原作(アニメ版含む)のイメージを壊したくない方はお控え下さい★☆ ☆★駄作ながら無断転記はご容赦願います★☆ ⇒OKな方は下記Moreへお進みください! 「陽だまりの冬休み」 「もう!いきなりぶつけるなんてひどいわ!」 「当たり前じゃないか、びっくりさせなくちゃ意味がないもの・・・あははは。」 真冬の午後の公園、カトリとマルティは雪合戦で白い息を切らしていた。 丸めた雪が宙を切るたび、粉のように雪が散って日差しにきらきらと舞った。 「マルティー!仕返しよ!」 カトリは満身の力を込めて投げた。が、雪はマルティの肩をかすって砕けた。 カトリは中等部の一年生、マルティはそのひとつ上の学年で、二人に雪合戦は子供っぽい遊びになりつつあったが、今日から学校が冬休みに入った開放感からか二人は夢中して雪を投げ合った。 「カトリがそんなにムキになるの、めずらしいな。」 「だって、突然あんな大きな雪をぶつけるんですもの、くやしいわ。」 「ごめん、ごめん。でも、きみのその手の雪だってかなり大きいじゃないか。」 そういってマルティは隠し持っていた雪を投げ、カトリの赤いコートに命中した。 「もう・・・!マルティったら!」 「僕がカトリに勝てるのは、つりと雪合戦ぐらいかもね!」 カトリは大きく息をつきながら、自分のコートについた雪を払った。 朝まで新雪が降り、そのあと久しぶりに日差しが出たせいで、外がやけに明るく感じる。 「・・・私たちの国は冬がこんなに長いのに・・・あんたとこうやって雪で遊ぶこと・・・あんまりなかったわね。」 カトリの上気した頬に雪が落ちて雫になった。 「そういえばそうかも!夏はよく牧場で遊んだね。」 マルティもまだ息を弾ませながら、ほどけた水色のマフラーを巻き直した。 カトリは奥様に郵便局へのお使いを頼まれ、そのあとは冬休みの初めの日だから、とお休みをくださった。郵便局の途中でマルティと落ち合い、一緒に用事を済ませた。 帰り道、公園の前を通るとあまりにも白い雪のじゅうたんが美しくて、二人して思わず足を踏み入れたのだった。 午後からのお天気で他の子供達も楽しそうな声をあげていた。 「・・・ねえ、お屋敷に戻ってストーブで雪に濡れた服を乾かしましょ。あなたはお客様だからお茶を出してくれるはずよ」 「ありがたいな。あー、指がじんじんとしてきた!」 「わたしにあんなに雪をぶつけたバツよ。」 手袋をはたきながら、二人は公園の出口へと小走りした。 「ねえ、本当にクリスマス休暇はおうちに帰らなくてよかったの?」 「うん。お父さんに友達の家やアッキさんの家のパーティーに呼ばれているから、こっちにいたいって言ったんだ。新年に帰ると約束したら許してくれたよ。カトリもアッキさんのパーティーに呼ばれているんだろ?」 「うん。一緒にいきましょうね。」 「もちろんだよ」 「マルティがいてれると私は嬉しいけど、寄宿舎にはもう誰もいないんでしょ。」 「中学二年ともなれば、何人かは宿舎に残っているもんだよ。」 マルティは寮のある男子中学校に通っており、生徒はマルティのように地方から就学しているものが半分いる。 「せっかく家族と過ごせるお休みなのにさみしくないのかしら。」 「さあね。少なくとも僕はさみしくなんかない。カトリと一緒に過ごせるんだもの!」 マルティは満足げにカトリに顔を向けた。 「マルティったら。」 二人は笑顔を互いにむけた。 木の枝に積もった雪が風にさらさらと流れていく。 カトリはそれを上等なお菓子にかかっている粉砂糖みたいだ、と思った。 「・・・宿題がなかったらもっとすばらしい冬休みなんだけどなあー。」 マルティががくっと顔を落とした。 「どんな宿題?」 「中学生向きの本を二冊読んで読書感想文を書くようにって・・・。」 「そんなの、簡単じゃない。」 「本が好きなカトリには簡単な宿題かもしれないよ・・・あっ、きみの中学には図書館ってあるの?」 「教室と同じ広さの図書室があるわ。でも、授業が終わったらすぐ帰らなくてはならないし、あんまり行ったことがないの」 「そう。ぼくの学校の図書館はわりと立派なんだ・・・。もちろんトゥルクの市立図書館よりは小さいけどね。ねえ、カトリ。ぼくの学校の図書館に行ってみないか。そうだ、今から行こうよ!」 「行きたいけど。冬休みだし、閉まってるんじゃないの?」 「いいや、逆に生徒が休みになって、クリスマスの前まで町の人にも開放しているんだ。学校はここからそう遠くないから、行ってみない?」 「じゃ、ぜひ行きたいわ。」 「読みたい本が見つかったら借りることもできるよ。」 「マルティ、ありがとう。嬉しいわ、お願いします。」 いつものようにカトリの喜ぶ顔を見れば、マルティの心も充足される。 「よし。そうと決まったら急ごう。」 「ええ。」 フィンランドの冬は朝の8時くらいにならないと明るくならないし、午後の3時となれば日が暮れ始める。それには慣れっこだが、明るいうちに行動するに越したことない。 「・・・大きな建物。」 見上げてカトリは言った。 ツタの絡まるレンガ造りの建物は、カトリの中学の建物の一棟はあろうかと思われる立派な図書館だった。 「マルティはいいわね、いつでもこんな立派な図書館に来られるなんて」 「でも僕は君ほど本は好きじゃないからな・・・。」 ブーツの底を掃い、二人は中へ進んだ。 明るい外から建物内に入ったカトリは一瞬目が暗くなったが、次第に慣れると、壁沿いに高くそびえる本棚を見て嬉しくなった。 宝の山を見つけたようにわくわくしてきた。根っからの本好きなのだろう。 カトリは興奮を抑えながら、マルティに口を寄せた。 「・・・私。」 声を出すとあらためて館内の静けさを感じる。人影はまばらだった。 「私、市立図書館には行ったことがないのよ、マルティ。ここより広いなんてトゥルクの図書館はどんなに素晴らしいの。」 「それはそれはうんと大きいよ。こんどの休みに行ってみよう。」 「ええ。とにかくここへ連れてきてくれてありがとう、マルティ!」 「そんなに喜んでもらえるなんて、よかった。さあ、それはそうと、ゆっくりみれば。」 「うん。」 カトリはマフラーもコートもとらず、そのまま通路をゆっくり歩き始めた。 本棚のさくいんを夢中で目で追った。 思想、宗教、産業、科学、宇宙、百科事典、図鑑、フィンランドの物語、外国の物語・・・。 高い窓からもう斜めになった太陽が差し込んで、なんだか神々しい場所のようにも思える。 本棚の間を縫って歩けば本の匂いがカトリを包みこむ。 『これは・・・』 背表紙にビクトル・ユゴーの名を見つけた。 「『ああ無情』って、確か、フランスの本よね。」 本を取り出し、ぱらぱらめくってみた。少し難しそうだけど、なんとか読めるかも知れないと思った。すぐに本に目を落とし、集中してしまう。 「・・・カトリ。」 カトリは驚いて肩を動かした。 「ごめん、びっくりした?」 「ううん。」 「ねえ、これを見て。」 「え?」 マルティが一冊の本を差し出した。 「最近・・・僕もなんとなく将来のことに興味が出てきたんだ。」 「本当?で、どんなことに?」 「うん。こういう仕事をやってみたいなって思ってさ。」 マルティは本の表紙をカトリに見せた。表紙には船の絵が描かれていた。 「マルティ、船員さんになりたいの?」 「ううん、そうじゃないよ。これ。」 カトリは表紙の見慣れない単語を読もうと首をかしげた。 「・・・ぼ、う、えき?」 「そう。どんな仕事かと、言うとね、ぼくらの国の商品と他の国の商品を売ったり買ったりするんだ。商売の一種だよ。」 「ふうん。どうしてそう思ったの?」 「お父さんが来たときに一緒会った知り合いのおじさんの話を聞いてね。この仕事は外国に行くことが多いんだよ。おもしろそうだなーって思ってさ。」 「それはすばらしいわ。奥様のお父様もよくスウェーデンやそのほかの外国へも行くのよ」 自分の知らないことを知り、将来に夢を持ち始めたマルティをカトリは頼もしく思えた。 「外国語も勉強しなくちゃあいけないな。近くの国の言葉はなんとなくわかるとして、英語とかも分った方がいいんだろうな。」 「すてきなお仕事。マルティにも夢が見つかったのね。」 「夢っていうか、実際になれるかわからないけど。」 「・・・そう。ねえ、マルティ、そうやって話しているとなんかとっても―――。」 カトリは調度よい言葉が見つからず、詰まってしまった。 「・・・なんて言ったらいいんだろ?」 「ねえ、カトリもこの仕事おもしろそうと思うだろ。」 カトリはマルティの、自分より少し高くなったまなざしが生き生きとしているなと思った。 マルティはマルティで、見上げたカトリの瞳はなぜいつもキラキラしているんだろうと思った。 あっとマルティは我に返り、 「・・・邪魔してごめん。またあとで!」 と、本棚の陰に去っていった。 カトリは再び本棚へ顔を戻した。 表紙を追うだけでおなかがいっぱいになりそうになりながら、本の中をさまよった。 外で教会の鐘が鳴った。カトリはなおも夢中だった。 外国作品のコーナーでカトリは足を止めた。 「・・・とっても有名なイギリスの、舞台の脚本を作った人ね。」 シェイクスピアの作品が並ぶ一角だ。 タイトルも変わったものが並ぶ。どんな物語なのかしら・・・気持を掻きたてられる。 その本は自分の頭よりひとつ高い棚にあった。カトリは奥に踏み台があることを認めたが、背伸びをすればなんとか取れそうだ、と判断した。 手をめいいっぱい伸ばして、指を背表紙に引っ掛けて引き出す・・・。つま先立ちして指に力を込めると、背表紙をほんの掴むことが出来た。と、同時に、カトリに予想外の出来事が起きた。窮屈に並べられていた両側の本がつられ、結果、カトリの頭上からドサドサ本が振ってくることになった。 「きゃーっ!!」 カトリは本のあられがぶつかり、倒れた。 なにかが落ちる音とカトリの声を聞いたマルティが駆けつけてきた。 バタバタと近づく足音にもカトリはうずくまったままだった。 「カトリ!どうしたの!?」 カトリは丸くなったまま頭を抱えていた。 「・・・痛ーーい。本が落ちてきて・・・。」 「大丈夫かい!」 「あそこの・・・高いところの本をとろうと思って・・・」 マルティはカトリの様子を確認しようと近づいた。 カトリはまだ顔を上げず――ひとつふたつは角から落ちてきたかもしれない――頭をかかえて座り込んでいた。 「立てるかい?」 「ええ、平気よ・・・」 小さくなっているカトリの目には涙が滲み、顔が紅潮していた。 まだうずくまっているカトリの様子を心配そうにマルティが覗き込んだ。 なめらかな産毛を持つ頬。それは熟れはじめの果実のような鮮やかさ。 そしてそれは昔から大好きな愛らしい顔立ち。 その顔をゆがめているカトリがとても弱いものに感じられた。 マルティの胸がひとりでにきゅうと、なった。 マルティはなにかに吸い寄せられるかのように、カトリに顔を寄せて、彼女の頬にキスをしてしまった。 「マルティ・・・?!」 マルティ自身も思いがけないことだった。カトリの反応にマルティはぱっと体を引き離した。 「・・・カ、カトリ。」 カトリはその頬を手で被った。 「・・・どうして?」 「・・・わ、わからない。」「・・・僕、カトリが心配だったのに・・・」 マルティはぺたりと床に腰を落とした。 「それなのに・・・・。」 カトリは頬に手を当てたまま、思案していた。 「・・・。」 「・・・。」 「・・・キスってお母さんやおじいちゃんやおばあちゃんや奥様やぼっちゃん・・・それからアベルや牛なんかにされたことがあるけど・・・」 「――お友達にされたのはあんたが初めてだわ」 カトリも呆然といった感じの力の抜けた声で言った。 「・・・ごめん。カトリに近づいてたら、なんだか」 「・・・?」 「・・・そんな風にしたくなって・・・」 「ふうん、そうなの。」 「・・・うん。」 マルティは帽子をさらに目深にした。 「いいのよ、マルティ。私、ちょっとびっくりしただけ。」 「・・・悪かったよ・・・・。」 「気にしないで、マルティ。」 マルティはそのまま下を向きながら手を延ばし、本を集め始めた。 カトリもつられて頭をさすりながら本を集めた。 「・・・ぶつけたところ、大丈夫?」 「ええ。さっきので痛いの飛んでっちゃったみたい。」 マルティは再び真っ赤になった。 「どうしたの?マルティ?」 「・・・べ、べつに。」 「さっきからおかしなひと。」 「ね、ねえ、カトリ。日が落ちてきたから、借りたいの決めて、そろそろ帰ろう。」 「ええ。そうしましょ。」 マルティはゆるりと立ち上がって、横を向いたままおずおずとカトリに手を差し延べた。カトリはいままで何度となく差し出されたマルティの手をいつも通りありがたく受け取った。カトリの手が触れるとマルティは息を飲んだ。 カトリは起き上がると服をはたき始めた。 「・・・せっかく苦労したんですもの、この本にするわ」 その本は『ロミオとジュリエット』だった。 「寒ーい。」 図書館から出ると、冷たくなった空気がふたりの頬に張りついた。 空もうっすらと明るさを残したまま、夜の色に塗り替えようとしている。 外の風に当たるとマルティはさっきのことが不思議に思えた。 しかし、マルティは最近カトリに対する自分がヘンだな、と思うときがある。 さっきみたいに、カトリがとても小さく、弱々しく思えることがたまにある。やさしく守らなければ、そんな気持になることがある。隣のカトリをそうっとみた。 本を抱え、満足げないつもとなんら変わらないカトリがいた。 そんなカトリは手袋の中の本に目線を落とした。 ―――どんなお話が待っているの?カトリは寝る前のひと時が待ち遠しくなった。そして楽しみを作ってくれたマルティにあらためてお礼を言った。 「今日はありがとうございました。これをお借りしたの」 「・・・シェイクスピア?」 「ええ。読んだことある?」 「ないよ。君は?」 「学校でも習わない?」 「名前を知っているだけだよ。」 「ねえ、マルティ、パーティーまでに読むから、返してもらってもいいかしら。返しに行く面倒がなくなるから。」 「それもそうだな。でもそんなに早く読めるの?」 「がんばるわ。ついでにあんたも読めば?」 「うん・・・でも感想文は書きづらそうだなあ・・・。」 ・・・淡い想いは、おなかが空くようにすぐ元に戻ってしまう。 次第に二人はいつも通りの調子になり、肩を並べ、帰りをいそいだ。 クーセラ屋敷の前まで来て、カトリはお屋敷に寄ることをすすめたが、マルティは帰ると言った。 お別れの時間が近づくと、カトリとマルティはいつものように話を終えるのが惜しくなる。 ドアの前でおしゃべりが続いた。 「じゃあ、クリスマスパーティーの日に迎えに来るよ。」 「ええ。マルティ。暗くなったから気をつけて帰ってね。」 「うん。」 マルティは駆け出し、ポーチから離れた。 そしてふとなにか思い出したように足を止めた。 「・・・ねえ!カトリ!きみはあの服を着てくるのかい?!」 「・・・ええ。」 カトリは顔色を変え、少しふくれた。 あの服、とは奥様がしたててくれたピンク色のドレスのことだろう。 「ねえ。あなた、いつも服をほめてばかりね。」 「えっ?」 カトリはあきれたという風に腰に手を当てた。 「なぜそんなにあの服が好きなの?」 マルティはどぎまぎし、口ごもった。 「ち、ちがう・・・それは・・・」 「もういいわよ。」 カトリは首をすくめた。 「どうしてかっていうと・・・それは・・・」 マルティは頭を掻いた。 カトリはどんなときでもかわいいけど、あの桃色の服を着たときのカトリが一等かわいい、とマルティは思っていた。 マルティはその姿を見るのがとっても好きだった。 「・・・それは、クリスマスパーティーの時におしえるよ!」 マルティは手を大きくひと振り振って、夜道へ駆けて行っていってしまった。 カトリはその夜、ベットで寝そべりながら借りた本を読んだ。 それは自分の年とそう変わらない男の子と女の子の恋の物語。 ―――恋とはどんなものかしら? ふと昼間のマルティのキスを思い出した。ちょっと考えたあと、カトリは再び本に目を落とした。物語の人物とともに雪の舞い降りる夜更を迎えるのだった。
by peppermint_y
| 2007-11-25 17:00
| anime
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