macross個人的創作話「天使と悪魔」

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
「超時空要塞マクロス」をベースとした”二次創作”です。

こちらはリンク先、「萌えおぼ」のゆば様宅に
差し上げたものを書庫化したものです。

素敵な書き下ろしイラストを堪能できますので、
そちらで読んでいただくことをおすすめします053.gif


※18才未満の方、性的表現、宗教的表現を嫌う方は
申し訳ありませんがこれよりお進みにならないでください。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::




<天使&悪魔>

恋人同士がその扉を開けたら――。


好きな人の名を呪文のように呼ぶと、不思議な魔法が叶う。

「―――!」

全身をうっすら湿らせ、充足感にまみれた輝がやっと起き上がった。
自分を受け入れる体なのに相手の体はなぜか自分より小さく細い。そのまま支配したいのに、われに戻った苦しみで天を喘ぐしかなかった。
『まったく・・・』
ついこの前まで手元に無かったものなのに、一度掴んだら何度も極みへ挑戦したくなっている。
好敵手、未沙は隣でこまやかな息をしている。その姿がいとおしいのはもう少しあとなって判ること。今はなんといっても到来した悦びにもてあそばれているのがたまらない。

一方、未沙は、寄せては返すものとは別に、解放感を得ていた。落ち着いた呼吸を取り戻すころには、輝の夢中な生業を思い出し、誇らしい気持ちにもなっていた。なのに、途中、未沙は泣いてしまった。それは考えてもなぜだかわからない。子供の頃、おっかなびっくり乗った遊具や動物の背をさすったときのように次第に愉しくなるどころか、ぞくぞくと怖くなってしまったのだ。

そんな風にふたりは一瞬思い思いに体を休めていた。

何度目かの夜は更けていく。

          

<――天使さん、天使さん・・・>

白い羽を持つ天使が淡い風の中を漂っていると、どこからか声がした。
聞き覚えのある声だったが、思い出せない。
「私のこと―――?誰―――?」
どちらの方向から声がしたのか、見当もつかない。

<僕のこと、判らないの>

また声がした。
相変わらず誰だか分からないが、その声のなつかしさから答えてみる。
「私、雲よりずっと上にいるんだもの。見えないわ」

<――くすっ。僕だって同じ所にいるんだけどな>

周りは雲海だらけで、姿が見えないのは自然なことに思えた。
「じゃあ、もっと近くに、ここへ来て姿を現して」

<うん、いいよ。けど、キミが驚くかもしれない>

「驚く?私が?」
白い天使は頭をめぐらせた。
「なぜ、私が驚かなければならないの?だって、私、あなたのことは知っているような気がするんだけれど・・・」

<ふふ・・・そうかな>

「実は、確信はないわ・・・そんな気がするだけ。それより隠れてるなんて気味が悪いから早く出てきて」

<・・・・。>

少し沈黙がつづいたあと、白い天使はもう一度訊いた。
「あなた、私のこと知ってるの」

<――うん、ずっと前から知っている。羽を休めたその姿までも>

「ウソよ。違うわ。だって私は一度もこの羽を置いてみたことはないんだもの」
憶測でものを言い、姿を見せない相手にあきれた。
白い天使は衣のすそをまとめ、その場を去ろうと姿勢を構えた。

<―――待って>

白い天使は飛ぶのを躊躇した。実は掃いきれない思いもあって。

<――今、目の前に行くよ。そしたらきっと僕のことを思い出す――>

すると、たちまち辺りの雲が渦を巻き、厚みを帯びて、黒い影に染まった。
稲妻のように一筋ピカリと光り、白い天使は眩しくて目を閉じた。

ふたたび・・・目を開けると、目の前に塵のようなものが散らついた。
それが口元に触れて、避けようと顔の前に手をかざしていると、

「ほら。きみのいう通りに――」

現れた姿は、自分とさほど変わらない姿――人間のような体を持っていた。

「私、やっぱりあなたのこと知らないわ」

ようやく声の主が姿を現したものの、白い天使には見覚えがなかった。
背中には黒い羽を背負っている。その羽が飛び散ったのか。
「ひどいな。僕は君のこと、何でも知っているのに」
あいまいに笑う黒い羽を持つ者に、白い天使は無表情のまま。
「悪いけど、あなたのこと、まちがいだったみたい。そんな風に黒い羽を持った天使とは出逢ったことがないわ」
そんな白い天使に、黒い天使は穏やかな顔のままでいた。
「今思い出せなくても別にいいさ・・・そのうち必ず思い出すから」
「――あなた、本当に天使?」
形は自分とよく似ている。
「まあ・・・少し違うけれど、そんなようなものさ」
「ふうん。じゃあ、どうして羽が黒いの」
違うのはその背と体つきがわずかに。
「教えてあげる。天使さん。これはね、下界の欲望を縫いながら飛んで来たからなんだ」
「下界・・・人間の欲望ってこと?」
「そう」
黒い天使は、明朗な声色で答えた。
「人間の欲望ってそんなに汚れているの?」
「――そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、黒という色はさまざまな色が交じって出来ていることはきみだって分かっているくせに」
白い天使は頬を膨らませた。
「分かってるですって?ねえ、なぜそうやって私のこと、決め付けるの?私はあなたのことなんて知らないと言っているのに!」
白い天使は言葉を強めながら、黒い天使の顔をじっと見た。
前髪の奥の眼はこちらを見すえていたが、濁りは見当たらなかった。見つめ合って、ハッとし、思わず視線を彷徨わせると、上に、逆立つ髪の中に突起するものがあることがわかった。
「じゃあ、それはなに・・・頭の」
「これ?」
白い天使はそれに向けて指を差した。
「角、っていうものだよ。・・・本当に。本当に僕のこと何も知らないんだね」
「私は質問をしているだけ」
「――残念だな」
「残念・・・?」
目の前の異様な者の表情が真実のように見えたので、白い天使はますます判らない。
本気なのか、だましているのか。そしてなぜ自分に関わってくるのか。

「ねえ。もうすこし賢くなりたいなら僕とダンスをしないかい?」
「賢く・・・ですって」
「ああ」
「私を馬鹿にしているのね?」
白い天使がやや張りのある声を発し、背中を羽ばたかせた。
よい香りが舞い立つのを黒い天使は感じながら、鼻先で笑った。
「いいや。あまりにもきみが無垢な顔してるもんだからさ。そんなことよりダンスしようよ。天使に琴の音と優雅な舞踊はつきものだろう?」
もともと、白い天使は踊ることが好きだった。
ただ、初めて出会った者と踊っていいものか迷った。
すると黒い天使の右手がすうっと差し出された
「さあ、僕と踊ろう」
「裏切ったり、しないわね?」
「なにをもって裏切りというの」
「わからないけれど、なんとなく」
「さあ、僕と新しいステップを踏もうよ、勇気を出すんだ――」
うながされて白い天使はその手をつかんだ。すると、黒い天使は細い手を力いっぱいに引っ張り、その身体ごと抱き込んでしまった。
「・・・ちょっと、苦しいじゃない・・・!」
「・・・そう?」
「あなたのいうダンスって、こんな風に体をぴったりと寄せなきゃならないの」
「そうだよ。こんな風なやり方が一番楽しいんだ」
白い天使は、嘘、と言いたかったが、眠けに襲われるように即座に熱い腕の中が心地よくなっていった。

楽器なんてどこにも無いのに、頭に浸透してくるこのリズムはなんだろう。
そして、この身が消えそうなほどこの腕の中がなじむのだろう。

「ご気分は?」
「ううん・・・ええ・・・なんとなく・・・」

眼を閉じ、力を失いそうな白い天使。
身を黒い天使にまかせきりでいると、いつの間にか身体を覆うやわらかな衣服が緩められていた。
またたくまにするりと離れ、そのまま下へ落ちていった。
布が小さくなっていくのを見送っていた黒い天使は密着していたその身を離し、自分の纏いものの胸元を裂いて、取り去った。
その隙に、離した白い天使がゆっくりすりぬけたのを硬い腕で掬い、黒い天使はさらにきつくきつく抱きしめるのだった。
「・・・もし・・・かして・・・」
白い天使は弱弱しく声を出した。
腕の力で完全に自分を失いそうになりながら。
「下の方にも・・・角がある・・・のね・・・?」
「ふうーん――判るんだ・・・ご名答。」
ご褒美、とでもいうように即座に黒い天使が白い天使の下顎をペロリと舐めた。
「――ダンスには・・・少し邪魔・・・だわ・・・」
「じゃあ、なだめてもいい?」
「・・・そんなこと・・・できるの・・・」
「ああ。そうさ、繋がればもっと上手くいく。やってみようか?」
「それは、どんな風に――あっ!」
白い天使は声を上げた。
突き抜ける感触に背を逸らして、性急に。けれど艶ある声。
「他の・・・・他の天使はこんなの、誰も持っていないの・・・」
「だって、狂おしいほどにダンスをするにはこれに勝るものはないもの」
「う・・・そ・・・そんなこと、望んでなんかいな・・・」「―――!」
「でも君だってこんなふくらみを持っているじゃないか」
黒い天使は二つの弾力をやさしく掴み、撫でた。
その瞬間、白い天使の記憶に蘇るものがあった。

不明確ながらに、突き立てられた痛みを覚えながら、酔いしれている自分の姿を。

「・・・離して・・・・・」
「きみはさ・・・きみは質問するばかりで、ちっとも僕を判ろうとしていない。だからバツ、さ」
黒い天使は白い天使の全身を、おのれの黒い羽でも締め付けはじめた。
「・・・・・!」
白い天使は呻きながら、滴るなにかを感じた。
「あなた――あなた、いまなにを・・・」
けれど滴りを感じるのは不思議と悪くない・・・快い。
「ふっ、また質問か。じゃあ、今度は僕から訊くよ。君は我がもの顔で自分を天使だという。君は何者に遣う天使なんだ?」
「ア・・・アフロディーテの女神よ。それに遣う愛の――愛の使者のひとりよ――」
「愛の使者ね、愛といえば欲望がつきもの・・・お互い死ぬなどと冗談をいいながら掻きむしるような欲望をね」

重なった二つの姿は自然のまま、漂った。
ゆっくりらせん状に回転しながら―――。

「欲望・・・?冗談・・・?違うわ、私は・・・」

途切れ途切れに言葉を漏らす白い天使に、黒い天使が唇を寄せて、吸い取った。

次いでキラリと稲妻が走った。
細く鋭い竜巻が起き、身体を合わせた二人が、今度は舞い上がる。
白い天使は半身の間に黒い天使の体をはさみながら、音を立てながら唇を離し、逃げるように背中を反らした。

「ああ―――」

風と霧が舞って、二体の羽は濡れそぼった。

「・・・清く・・・美しい愛を・・・運んでいるだけなのに・・・」

言い終えると、白い天使はもう抗うことなく、黒い天使とともに見えない底に落ちていくのだった。
黒い天使が耳元でなにか唱えると、白い天使は必死に自身を取り戻そうとした。しかし。

「―――おちて、しまう―――」

        

白い天使が目を覚ましたときは、天蓋のように雲が棚引く中にいた。

ある期待にそっと横をみると、あたりには黒い羽が散り散りに落ちているだけだった。

「・・・あなたは天使ではなかったのね・・・」

ひとり、つぶやいた。
片割れがそこにいるように、羽がつぶれるのも気にせず寝返りを打った。

「やっぱり、ずっと前からあなたのことを知っていて――あなたのことを」

彼がここにはいないことを本当は、いにしえから理解していた。

無数の黒い羽の中に、自分の羽がいくつか混じっていた。
黒いそれは漆器のようにつやめいており、自分の色が乱しているように思えた。

「・・・落ちていく時にあの人の声が聞こえたのよ・・・僕は天使じゃない、って」
横たわりながら腕を伸ばし、それをそっと手繰り寄せた。
「・・・・・」
もう片方の手で小さな牙が付けた胸のしるしを撫でながら、相手が告げたことを思い浮かべていた。

『僕はずっと好きだったよ』

陰陽に絡みついた身体の形はすぐに解けない。
その余韻がせめてもの救いだった。

『僕には、遂さなければならないことがある。だから君とはちがう姿でなければ・・・・』

天使は身を起こして、先に見える光を眩しそうに見た。
白い天使は自身の使命をひとつ遂げられたことを理解して、よろこんだ。
そして、いつか時空を超えたとき、片方との戯れを予感するのだった。



<おわり>
[PR]
by peppermint_y | 2009-08-27 12:00 | anime | Comments(0)